こころから

V6や、その他のよしなしごと

君は誰? 彼は誰? ー原作未読で観た、映画「ピンクとグレー」ー

 去る1月9日、渋谷で映画「ピンクグレー」を観てきた。正確にいうと鑑賞前に20ページ(文庫版)ぐらいまで、この記事を書いている今は第六章の半ばまで原作を読んでいるが、とりあえず現時点でのこの映画の感想をざっとまとめておく。たぶんメタ的に考えすぎな気がする。
 
※一回しか見ていないので記憶違いがあると思いますがご容赦ください…
 
構造
 映画「ピンクとグレー」は開始から62分後までが河鳥大著『ピンクとグレー』の映画版(白木蓮吾/鈴木真吾役:河鳥大)であり、後半はその外側、映画が撮影された世界を描いている。前半が甘く切ない典型的な青春映画であるのに対し、後半は悪い夢のような毒々しさ。
この「仕掛け」は何となく想像が付いていた(私にとっては、予告編ラストの裕翔くんの服装が決定的だった)が、実際にピンクからグレーに切り替わったときは混乱した。次々に提示される「メイキング」「出演者インタビュー」「白木蓮吾」「サリー」。特に、試写会後のパーティーであの3人が並んだ瞬間は世界がぶれるような感覚だった。「河鳥大と成瀬凌と三神麗」、「白木蓮吾と河田大貴とサリー」、そして「中島裕翔と菅田将暉夏帆」がいっぺんにそこにいた。自分が今何を見ているのか、常に考えることを要求される映画だった。
 ピンク→グレーは即物的にいえばカラー→白黒だったわけだけど、それを意識したのは切り替わった直後だけだった。映画を味わうのに、意外と色なんて重要じゃないのかもしれない。
 
風船のシーン
 りばちゃんがごっちの死体を発見する直前、りばちゃん・ごっち・サリーがそれぞれの場所から同じ風船を見るシーン。どう解釈すればいいかわからなかった。「同じものを見ているが今は違う場所にいる」、「違う場所にいても繋がっている」とか?
 
3人のごっち
 劇中には3人のごっちが存在する。
 1人目はりばちゃんが『ピンクとグレー』で描き、自ら演じたごっち。2人目は、芸能界で目にした白木蓮吾の痕跡・ごっちの姉のビデオ・自殺の模倣によって得た情報でりばちゃんが再構成したごっち。つまり、物語の最後にりばちゃんが見た幻覚*1である。そして3人目は62分後の世界で生き、死んだほんとうのごっち。彼はポスターや断片的な映像としてしか劇中には現れない。
 この3人がどこまで重なりあっているのか、私にはわからない。河鳥大の『ピンクとグレー』がどこまで真実かもわからない(りばちゃんが誠実に書いていたとしてもそれはあくまで「りばちゃんから見たごっち」だ)し、映画化のための脚色が入っているかもしれない。そもそも、三神が劇中で言っていたように、ほんとうの自分なんてものは誰にもわかりっこないのだ。
 ほんとうのごっちを捜し求めたあげくりばちゃんは「姉に憧れて死んだ、死にたがりのごっち」と対話した。彼はりばちゃんを解放し、肯定した。 自分を見失い苦しんでいたりばちゃんは、そんなごっち像を選択したのだと思う。りばちゃんは「生きていたい人」だから。
 
遺書
 りばちゃんが対話したごっちは、姉と同じ日に死ぬともともと決めていたという。あの日が同窓会であろうがなかろうが、りばちゃんと再会しようがしまいが、もともとごっちは死ぬつもりだったのだ。姉への愛のために。つまり本質的に、ごっちの死にりばちゃんは関係ない。これは劇中劇『ピンクとグレー』から感じたことになってしまうが、ごっちにとってりばちゃんは大して重要な人間ではなかったように見えた。りばちゃんにとってのごっちがあまりに大きな存在であるのに対して。
 ならば、どうしてりばちゃんのために6通の遺書を残したのだろう? 無駄な労力では?
 そこまで考えて思い出したのが、「やらないなんてないから」「やりたいことじゃなくて、やれることをやるの」*2だった。親友というカテゴリーに入るりばちゃんにチャンスを与える機会(やばい日本語だ)を見つけたごっちは、それを活かさずにはいられなかったのではないか? (我ながら牽強付会だと思う)
 そもそも「やらないなんてないから」の意味が原作と違いそうな予感。
 
りばちゃんは本当に頑張ってないのか問題
ピンクもグレーも関係なく、りばちゃんはとにかく否定され続ける。だが、エキストラに毛が生えた程度の演技経験しかないのにあんな演技ができるのは十分すごくないか? そもそもあんなに顔が綺麗ならどうにでもなるんじゃね?
 
好きなシーン
・ごっち姉のダンスシーン
冒頭では何が何だかわからなくて、物語全体の暗喩かな? と思った(微妙に合ってるのか?)。小林涼子さんが綺麗。
 
・ガラスのドア越しに姉を撮影する小学生のごっち
なんか気持ち悪いな、と思っていたらあんなことに。
 
・ごっちと共演するも、失敗するりばちゃん
りばちゃんを見つめるごっちの哀れむような目がたまらなかった。
 
・ごっちの熱愛報道を見てしまうりばちゃんとサリー
その場にいない人間によって繋ぎとめられているふたり、という構図にぞくぞくした。
サリーの部屋が学生時代とは全然違うのが辛い。何の仕事をしてるんだろう。
 
・「Hey Girl」
ダサすぎてびっくりした。あれを照れずにやれるのは確かにすごい。
 
・とにかく軽薄な成瀬
シーンじゃないけど。成瀬と河鳥の関係は菅田くんと裕翔くんに(売れっ子実力派俳優と、経験浅い初主演俳優という意味で)重なってさらに混乱した。中学生のころダブルをリアタイしてた世代だからそもそも見てる間ずっとびっくりしてた。菅田くん上手になったね…
 
・自殺直前の姉を撮影したビデオ
小林涼子さんがとにかく魅力的だった…あんな姉が欲しい…
それにしてもお母さんはどんな気持ちでりばちゃんにあんなビデオを渡したんだ。
りばちゃんはすぐにものに当たり散らすなあと思った。
 
 
 要約すると、私はこの映画大好きだ。メタ的で考察しがいがあり、俳優さんがみんな魅力的。あと、「わかりあえない」ことを肯定しているところも。
 週末までに原作を読み終えてまた見にいく予定だ。私の世界はどういう風に変わるだろうか。

 

Right Now(初回生産限定盤)(DVD付)

Right Now(初回生産限定盤)(DVD付)

 

 

*1:幽霊だったらやだなあ、と思っていたらパンフレットで監督がちゃんと否定してくれていた

*2:ニュアンスで話しています